ひみつノート

とりとめのないただの日記です。

雨の日と美術館

いつ頃からか、雨の日に出掛けるのが好きになった。

雨の日は、誰にも見つからずに外に出られるような気持ちになるからだ。

できることなら、誰にも見つからずに隠れて生きていきたい。平穏に暮らしたい。毎日同じ日々の繰り返しで全然良い。社会の片隅でひっそり生きていきたい。

世の中にLINEが普及し始めたころ、私はLINEを怖いものだと思っていて、LINEに登録すると世の中の明るいところに引っぱり出されるのではないかと思って怖くて始められなかった。

と友人に話したら、LINEを始めても社会の片隅でひっそり生きていけるよ。と言われた。それでも全然始められず、結局数年後、ツムツムがやりたくてみんなよりだいぶ後に始めたのだ。始めたきっかけが俗にまみれている。

 

雨が降ったら、行きたかったところに行く日にしようとなんとなく決めている。ずっと、地元の美術館に行こうと思って行けていなかったので、雨の中美術館へ向かった。

美術館のある場所は図書館や博物館などがひとところに集まっていて、祖父が生前よく通っていた。実家からその総合公園まではだいぶ距離があって、車で1時間以上かかるのだが、祖父はそこに歴史の勉強会や古文書の研究会などでまめに通っていた。祖父は知識欲がものすごくて、生きている間はずっと何かを勉強していた。亡くなる5年前くらいに突然、最近恋愛小説を読み始めた。と言いだしたし、亡くなる直前は英語を勉強していた。

英語なんて、こんな田舎に住んでいたら使う機会なんてほぼ無いのに。祖父の学びたいという意欲に私は本当に感動して、今でも一番尊敬する人である。なので、その美術館のある総合公園に行くと、なんとなく祖父の存在を感じられるような気がして心が洗われる。

 

美術館といっても規模はそんなに大きくないし、派手な展覧会をやるわけではない。有名な芸術家の回顧展もやらない。今回見に来たのも、美術館の所蔵作品の中からテーマに沿って選ばれた作品が展示されているというもので、今までに見たものもたくさんあった。けれど私は、少しでもそこに行ってお金を払って美術品が見たいと思っていて、少しでも、地元の文化を無くさないための力になりたい。と企画展のたびに通っている。

いつもだいたい美術館には人がいなくて、私1人ですいすいっと鑑賞して帰るのだが、この日は私を入れて3人もお客さんがいた。冗談抜きで、そこに3人も人がいることって本当にないのだ。美術館にとっては良いことだけれども、歩くたびに私の家の鍵につけた鈴がチリチリ鳴ってしまって、見ていた方はうるさかったと思う。申し訳ないことをした。

 

展覧会を見終わって、併設されている喫茶店で日替わり定食を食べた。

私は美術館にくっついているカフェやレストランが好きで、どこの美術館に行っても立ち寄ることにしている。

美術館の併設のカフェなんて、若い頃はオシャレすぎるわ敷居が高いわで入れなかった。席に座ってメニューを頼むのも敷居が高いし、先に注文するタイプのカフェも緊張しすぎてダメだった。分からないなら入って聞けばいいだけの話なのに、恥ずかしすぎてそれができなかった。自意識のかたまりだ。そんな日々も懐かしく思う。