ひみつノート

とりとめのないただの日記です。

かなしみ

先日、ギャスパー ウリエルが亡くなったという訃報が突然目に飛び込んできて、えっ、と一人で声を出して驚いた。ネットの記事を見るとスキー事故でとのことだった。

私は、「かげろう」(2003年の映画)の頃から彼のファンだったので、悲しくて少し泣いてしまった。素敵な俳優さんだった。私は彼と同い年なのだ。ちょうど最近彼のことをふと思い出して、これから歳をとっていっても良い演技をするんだろうなと思ったところだった。

 

「かげろう」は、好きな映画を10本選べと言われたら私にとって絶対に欠かせない1本である。第二次世界大戦中、夫を戦争で亡くしたエマニュエル べアールが息子と娘を連れてドイツ軍から逃げている途中、ギャスパー ウリエルに出会って行動を共にし、森の中の無人の屋敷で4人で暮らし始める、というストーリー。静かなトーンの映画で、エマニュエル べアールがずっとぼんやりタバコを吸っているのがとても印象的だ。

この映画はすごく切ないというか、見終わって呆然としてしまうラストを迎えるというか、とにかく悲しみに包まれて終わるんだけれども、不思議と後味は悪くなくて、20代前半頃にDVDを借りて何度も観た。

悲しいラストなのになぜ後味が悪くないかというと、そこにたどり着くまでのギャスパー ウリエルとエマニュエル べアールのぎこちない心の交流が本当に美しいのだ。戦時下だからこそ生まれた物語なのに、あんまり戦争のことを匂わせない部分も多く、おとぎ話を見ているような感覚に陥る。舞台がフランスだからなのだろうか、日本と違いすぎるからなのだろうかと不思議に思ったのを覚えている。

DVDの特典で、ギャスパー ウリエルアンドレ テシネ監督と対談しているのも強く印象に残っている。当時20歳ぐらいだったギャスパー ウリエルは対談中にずっとタバコを吸っていて(監督もずっと吸っていた)、日本だったらこんな若者が目上の人との対談でタバコを吸うなんてありえないので、文化の違いに驚いた。

 

別の日に、コンフィデンスマンJP英雄編を観に行った。私は映画は前から4列目で観るのが一番好きで、その日は大きなスクリーンの部屋で観ることができたので視界全部が画面に覆われて良い映画体験だった。そしてコンフィデンスマンJPは安定の面白さだった。作中で、三浦春馬さん演じるジェシーと、竹内結子さん演じるスタアがまだ元気にやっている描写があって、そうか、物語の中ではずっと生きられるんだなと思ったら泣くのを我慢できなくなって号泣してしまった。ハンカチを取り出したら周囲の人に泣いているのがバレるんじゃないかと思って服で目を抑えた。行儀が悪すぎる。

 

思えば私はずっと物語に生かされている。小説も漫画もドラマももちろん好きだけれど、いつも自分を丸ごと救ってくれる気になるのは映画で、特に映画館という特別な場所で作品を観させてもらえるということが本当に大きい。今まで映画があったから元気に生きてこられたし、これからも映画があればやっていける気がすると、その日帰り道を歩きながら思ったのだった。