ひみつノート

とりとめのないただの日記です。

最近読んだ本 2021年 9月

もうずいぶん前に出た本は、ばしばしネタバレをしています。

 

これはただの夏

燃え殻

タイトル通り、何気ない夏の話だった。そう思って読んでいた。すごく大きな出来事が起こるわけではなく、でも少し現実離れした、夏の日々の話だと思って読んでいたのに、最後の数ページ、ラストシーンに向かってゆく時の、ページをめくるたびに深まってゆくさみしさ、ここまで何気ない話だと思って読んでいたストーリーが大切な日々だったのだと分かる。何気ない気持ちで観ていたのに最後のシーンでわけもわからず大泣きしてしまった映画「スワロウテイル」のことを思い出した。私たちは皆さみしい。そのさみしさをどうしたらいいのか、私にはまだ分からない。

 

落下する夕方

江國香織

タイトルがめちゃくちゃ良い。10代〜20代にかけてよく読んでいたが、なんと今回初めて、ラストの直人くんの留守番電話のところで甥っ子のことを思い出して泣いてしまった。華子のような、自由気ままに人を振り回している人にずっと憧れがあるけれど、驚くことにそういった人のほうが私なんかよりずっと生きづらさを抱えていたりする。華子が死を選ぶ理由は書かれていないので永遠の謎なのだが、彼女は何を思っていたのだろう。いるだけで男性を虜にしてしまって、カップルも夫婦も全部壊していってしまうくらい魅力的な女性は、私からしたら恐怖である。梨果より華子を選んだ健吾が、20年ぶりに読んでもやっぱり好きになれない。

 

ハードボイルド/ハードラック

吉本ばなな

以前読んだ時はものすごく怖い印象だったのだが、今回はそこまで怖がることなく読めた。それにしても石ころの描写は臨場感溢れる恐ろしさがあって、魅せ方の上手さが本当にすごいと思う。ハードボイルドとハードラックで死者に対しての気持ちの持ち方が全然違っており、なのでハードラックのほうは読んでいて苦しかった。自分のきょうだいが突然倒れてそのまま帰らぬ人になってしまうなんて、辛すぎて想像もできない。呪いとかよりも逆にリアルで、それでも主人公は前を向いていて、それが救いではあるけれども。

 

ナラタージュ

島本理生

映画を観たので原作も読みたくなって読んだ。何年も何年も前に、この本にものすごく心を救ってもらった時期があった。改めて読むと登場人物たちの話し言葉を「当たり前だろう」とか「お金がないや、ちょっと銀行へ寄らないと」のようにすごくきっちり文章として書いてあるので、こんな喋り方している人が本当にいるのか?と思って違和感を感じたり、だからなのか登場人物が自分で動いているというより、こういうストーリーにするために作者に動かされているなと感じてしまった。男性陣がわりと皆クズなんだけどそれも作者がそう動かしているからと物語に入り込めない部分もある。けれどとにかく文章が美しく、自分にとって大事な1冊であることに変わりはない。