ひみつノート

とりとめのないただの日記です。

最近読んだ本 2022年 2月

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

村上春樹

この本を初めて読んだ時私は入院していて、入院中の暇つぶしに母に頼んで買ってきてもらったのだった。その頃体を壊しただけでなく、付き合っていた人と別れたばかりだったので踏んだり蹴ったりだった。踏んだり蹴ったりの私にとって多崎つくるくんの孤独はとても身近だった。このまま彼が幸せにならないで欲しいとひどいことを思って読んだ気がする。それから6年も経って、全然違う精神状態で読んだら多崎つくるくんの孤独はとても悲しく苦しいものだということがやっと理解できた。物語というものは受け取る側の精神状態によって左右されすぎる。心にゆとりを持って読むことが出来れば、この結末も、前向きに捉えることができると思う。

 

ここは退屈迎えに来て

山内マリコ

映画を先に観てしまっていたので、「桐島、部活やめるってよ」を観て、本を読んだ時のような気持ちになった。しかも物語も小説の方はオムニバス形式だったので、余計に重なってしまったというか。山内マリコさんは田舎の閉塞感と都会への憧れを描いており、私も田舎者で都会にも出ていたのだけれどそこまで共感する部分が少なく、それは私も歳を取ってしまったということなのだろうか?別に今となっては田舎だろうが都会だろうが大事なのは自分がどうやって生きるかなのだという結論に達してしまっているのだ。あと、映画の椎名の魅せ方が上手かったんだよなと思った。

 

ツ、イ、ラ、ク

姫野カオルコ

この作品以上の名作はもう無いんじゃないか・・・!?という気になっている。とにかく恋愛小説部門では私の中で1位である。これだけ登場人物が多いのにモブキャラもちゃんと一人一人個性があって分かりやすいし、子供の頃の女子ヒエラルキーも完璧に再現されている。ただ1点思ったのは、小学3年生にしては大人過ぎない?という。でも同じことをリリイ・シュシュでも、あと何か他の思い出せない作品でも思ったので、世の中はだいたいそうで、私が幼かっただけなのかもしれない。軽快な語り口調で進んでいく男女の秘密のあれこれが、読んでいて心に突き刺さる。人は過去にどうしようもない恋愛の一つや二つ経験していくものだけれども、それを大人になって回収できることは少ない。世間と周囲に痛めつけられながら、時が流れてまた巡り会えて本当に良かった。80歳になってもまた読みたいと思える作品である。

 

High and dry(はつ恋)

よしもとばなな

主人公は14歳の夕子。とても年上のキュウくんと、真剣な恋愛をする。14歳という若さの女の子を主人公にしているからこその、恋愛というものに対してきちんと向き合うお互いの姿勢が描かれていたのが大切なことだと思った。これが18歳だったらまた少し変わってくる。14歳の女の子に対して誠実でなければならないというのは、本当は年齢なんか関係なく、誰に対してもそうでなくてはいけないのだ。あとは挿し絵がものすごく可愛かった。よしもとばななさんは素敵な挿し絵を描く方と出会うのが本当に上手い。