ひみつノート

とりとめのないただの日記です。

最近読んだ本 2021年 12月

ことり

小川洋子

誰かにとって何が幸せで何が不幸せかなんてことは私がとやかく言うことではないのだが、それでも、どうしてこうも物悲しさをかき集めたみたいなお話がかけるのだろう。兄弟の架空旅行のくだりはもうなんというか心が苦しすぎて心臓がギュッとなってしまった。しかし物悲しいというのはただの私の主観であり、優しさにつつまれた物語だと言うこともできる。ことりの存在はずっと小父さんのそばに寄り添っていたからだ。その中で、小父さんとお兄さんがただひたすらささやかに生きたというだけの話なのだ。

 

何もかも憂鬱な夜に

中村文則

良かった。とても感動してしまった。主人公は刑務所に勤める青年で、死刑に対しての話が出てくるのだけど、私はやはり日頃の想像力がないので、死刑執行を行っている人の苦労などというものをこの本を読むまでほぼ考えたことがなかった。そんなになんでもかんでも感情移入していたら生きていけないのでそれでもいいんだけれども、でも犯罪を犯して捕まった人にも、「それまで」と「そこから」があるのだ。この物語はフィクションだけど、「そこから」に少し希望を持たせる終わり方をしてくれていてとてもありがたかった。

 

秘密の花園

三浦しをん

この本を初めて読んだのは18歳の時だったので、高校生離れしている那由多でも翠でもなく、淑子に一番感情移入をして読んだのを覚えている。10代後半などというのはとにかく感受性と自意識の塊なので、当時頭いっぱいに占められていた悩みのようなものは歳をとるにつれて消滅していく。なので大人になれば消えてしまうような不確かで美しい感情を、こんなにリアルに書けるということがすごいと思う。自分が歳を取って振り返ると、ただ一直線に人を好きになる10代女子を軽はずみにたぶらかす大人の男の人って本当に分別がないんだなとしみじみ思ってしまった。強く生きなくてはいけない。

 

ラスト・イニング

あさのあつこ

一時期バッテリーという作品にとてもハマっていた時期があって、本編のほうも文庫で全巻持っていたのにどこを探しても見当たらない。そのバッテリーの続編がこの1冊である。登場人物一のひねくれ者瑞垣くんが新しい道を見つけていく物語で、こういう続きのストーリーって難しいですよね。小説世界的に言えば、本編が終わったって登場人物たちの人生は続いていくわけで、それでもその続きを書いてしまったらそれが事実として存在してしまうわけで、それがいいことなのか悪いことなのか分からないけど続かせようと思ったらどこまででも続かせられるじゃないですか。2021年に読んだ感想だけで言うと、永倉豪くんから笑顔を奪ってしまったのは巧だけじゃなくて瑞垣にもおおいに責任があったと思うんだけど、その張本人が、笑ったほうが良いで。みたいに今更言ってくるなんて勝手だな!ということです。