ひみつノート

とりとめのないただの日記です。

最近読んだ本 2021年 10月

全部10年くらい前の作品だからとネタバレをしています。

 

私のなかの彼女

角田光代

角田光代作品の最近のものを八日目の蝉ぶりに読んだ。八日目の蝉がすごすぎて、その衝撃で新作を読めていなかった。ということは14年ぶりぐらいに読んだのだ。でもこの本も2013年のものなので全然最新作ではないんだけれどもとにかく人間を描くのが上手すぎる。和歌も仙太郎も、1人の人間としての存在感がすごかった。だからこその和歌に対してのもどかしさと、仙太郎に対してのいけ好かなさが実際の人物に対してのそれぐらい膨らんでしまってとてもつかれました。作家という職業も大変なものなのだなあと思うと同時に、自分の中で必要以上に大きくしてしまった他人の言葉に追い詰められることは私もよくあって、なんならここ1年半くらい実在しない他人の言葉をずっと気にしていて、そんなの気にすることないよとこの本がすごく教えてくれたので、なんとか、なんとか私も抜け出したいんだけどうまくいくかな。

 

ミュージック・ブレス・ユー!!

津村記久子

今のところ読んだことのある津村記久子作品の中ではこれが一番好きだ。なかでも、主人公アザミが進路指導の際に、「『やりたいことですか』ずっと音楽を聴いていることだ。ずっと、その時聴いている曲を最後まで聴くためにわざと遠回りをするあの帰り道を繰り返すことだ。」と考える部分が一番好きだ。10代の人が主人公で、児童書でもライトノベルでもない小説は結構少ないので、貴重な1冊だと思っている。音楽が好きで、ただ本当に音楽が好きなアザミの、感情を言葉に出来たり出来なかったりする具合がリアルすぎるし、青春なんだけれども感傷的になりすぎないのがまた良い。出てくる子達のキャラクターもみんな良い。十数年前にハードカバーでこの本を買っていた自分を褒めたい。

 

きょうのできごと

柴崎友香

全然覚えてないけれど、20年くらい前に映画を観ているはず。20年ごしに原作小説を読むなんてなかなか感慨深い。私もずいぶん大人になってしまったので、年上だった登場人物たちがだいぶ年下になってしまった。その目線で読むとみんな若くて可愛くて、それはとても素敵なことだった。本当に、なんてことないのだ。なんてことない1日の出来事を様々な目線で描いているのできょうのできごとというタイトルなのだが、舞台が関西で、私も関西に住んでいたことがあるのでその頃にふっと戻れるような感覚を覚えた。これを機に映画をもう一度観るのもいいかもしれない。

 

冷めない紅茶

小川洋子

表題作も不思議な雰囲気の話で好きなのだが、私はこの本に収録されている「ダイヴィング・プール」という短編が小川洋子作品の中で一番好きだ。ちょうど17歳くらいの頃に初めて読んだ時の衝撃を今でも覚えている。主人公の女の子が、自分の感情を満たすために小さい女の子に腐ったシュークリームを食べさせるその信じられない残酷さ。現実には絶対に許されないことだけれど、この物語のこの子のことを私だけは許してあげたいという気持ちになっていた。しかも、そんなことしなかったら好きな男の子とも上手くいっていたかもしれないのに・・・!という、人の愚かさが美しく描かれている作品です。